【完結】婚約破棄イベントが壊れた!

エリオット殿下とお忍びデート 4話

「オレンジジュースで良かった?」
「ありがとうございます」
「こうやって、カリスタと一緒に食べたかったんだ」

 一緒に食事をすることはあるけれど、こんなふうに食べるのは初めてね。

 エリオット殿下に「いただきます」と頭を下げてから、串焼きを食べた。

 ジューシーなお肉に、ちょうど良い加減の塩味。一緒に焼かれている野菜は甘くて美味しい……!

「普段、わたしたちが食べているものとは違うけれど、美味しいよね」

 こくこくとうなずくと、エリオット殿下は嬉しそうに笑った。

 ……この人は、こんなふうに笑うのね、と改めて思った。そして、この国をとても愛しているんだわ、とも。

 だって、こんなに愛しそうに平民たちの暮らしを見ているんだもの。

「……愛しているんですね」
「え?」
「この国の人たちを」
「…………そうだね。うん、そうだ」

 串焼きを食べ終わり、オレンジジュースを飲む。……濃い! 美味しい!

 オレンジジュースも飲み干し、ゴミはゴミ箱に入れる。

 最初は少し不安もあったけれど、もうすでに楽しいわ……!

「それじゃ、腹ごしらえも済んだところで、デートを再開しようか」
「はい」

 もう一度手を繋いで、わたくしたちは市場から離れた。

 それから、エリオット殿下と王都をいろいろ見回った。子どもたちが楽しそうに遊んでいるところ、女性たちがカフェでお喋りしているところ、男性たちが商談をしているところ……みんな、とても生き生きとした顔をしているのを確認し、殿下は微笑む。

 いろんなところを見て回り、すっかり夕方になってしまった。

 こんなに歩いたのは初めてかもしれない。

「城の中だけでは、外の活気はわからないだろう?」

「……そうですね」

 王都の平和を守る。

 ……わたくしに、そんなことが可能なのかしら……?
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