【完結】婚約破棄イベントが壊れた!
 じーっと見つめられて、わたくしは首を傾げる。

「それに、見つめていたわけではない。睨んでいたんだ」

 待って、なぜエリオット殿下がマリーさまを睨むのよ?

 もうわけがわからないよ……!

「……あの、申し訳ありません。まずはひとつ、確認したいことがあるのですが……?」
「なんだい、カリスタ?」

 うわぁ、すっごいイケボ。なんだその砂糖にはちみつをかけたようなあまぁいボイスは!

 ゲームでもそんな声してなかったよ!?

 そんな声を直接聞いてみなさい、破壊力バツグンだから!

 っと、そうじゃない。そうじゃなかった。

「おふたりは、恋仲だったのでは……?」
「冗談でもやめてくれて」
「秒でそんな返事、ひどすぎませんか? エリオット殿下!」

 食い気味で否定された。

 ええ、じゃああの噂はなんだったの?

 エリオット殿下とマリーさまが逢瀬(おうせ)を繰り返していっていう噂はなんだったの?

 わたくし、あの噂を聞いて『お、マリーちゃん王太子ルートか。よっしゃ、がんばって婚約破棄まで持っていくぜ!』ってがんばったのよ?

「なぜそんなことを?」
「エリオット殿下とマリーさまが、逢瀬(おうせ)を繰り返しているという噂が……」

 火のないところに煙は立たないっていうし、わたくしはマリーさまが王太子ルートに入ったと思ったから、できる限り悪役令嬢やっていたのに!

 王太子ルートじゃないとしたら、誰ルートだったんだろう?

「直接聞いてくれたらよかったのに。そうしたら、光の速さで否定できたのに……。すまない、きみの耳にまで届いているとは思わなかったんだ」
「え? は、はぁ……」
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