借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
房宗さんが困った顔をするのと同時に、ドアが叩かれた。
少し待ってくれ、と片手でジェスチャーされて、私はうつむく振りで房宗さんの様子をうかがった。
安田さんではない男の人と密やかに話している。雰囲気からすると深刻そうだ。
話がひと段落したらしく、房宗さんは取りつくろうような笑顔を私に向けた。
「すまないが、急用で少し出ないと」
「はい、では私は──」
「とにかく今日だけはうちに泊まりなさい。君の荷物は部屋に置かせておいたから」
ここで一晩過ごすのは決定事項らしい。うん、そのくらいなら甘えてもいいかな?
「ここの二階にある角部屋だ、大きな時計の近くにある」
房宗さんは最低限の案内だけすると、「ろくに案内もできずにすまない」と言い残して部下みたいな人と去っていった。
がらんどうの小部屋に一人になった私は、とりあえず階段を探そうと部屋を出ることにした。