借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
私は房宗さんの書斎のドアをノックする。
「安田か? 入れ」
不機嫌そうな声に招かれて、私は冷や汗をかきながら部屋に入った。
「君は……」
何事か言いかけた房宗さんをさえぎるように、栗毛の彼が姿を見せた。
「颯斗? 凛斗はどこだ? 安田はどうした?」
「話があるって」
そっけない言い方だったけど、今の私には救いだった。憐れむような声だったら、きっとひどく惨めな気分になっただろうから。
房宗さんがどうしたのかと尋ねる前に、私は深々と頭を下げて、言った。
「ここで、働かせてください」
房宗さんは呆気に取られたようにしばらく動かなかった。それでもそっと私の肩に触れてきて、断ろうとしているんだとわかった。
「すまないが、それは無理だ。家政婦でもない他所のお嬢さんにそんなことをはさせられない」
「借金のこと、さっき知りました」