借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
房宗さんが息を呑む気配がした。
安田さんへの手紙には、両親が房宗さんに借金をしていたこと、どうしても返せないこと、お金の代わりに娘を差し出すから、どんな扱いをしてもかまわないこと……まとめると、私を借金のカタに売ると書かれていた。
私は両親との思い出をなぞる。自分たちはいいからと言って、私だけ具沢山のスープを作ってくれたこと。新聞配達なんてさせてすまないと、帰ったらあったかいお茶を淹れてくれたこと。
そんな優しい両親が、ここまで追い詰められているのに全く気づかなかった。
だから、これは私ができる精一杯の親孝行。
「何十年かかっても返します。トイレ掃除でも何でもします……お願いします、ここで働かせてください」
黙り込んでしまった房宗さんの判断を待つ。永遠にも感じられる時間の中、私は頭を下げたまま目をつむっていた。
「顔を上げなさい」