借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜


 明け透けな物言いに言葉を詰まらせた俺に、凛斗はヘラヘラと続ける。



「安田の尻ポケットから落ちちゃって、それを拾ったの」



 文庫本に栞をはさみ、凛斗は立ち上がった。



「今のあの子には形見みたいなもんだろ」


「お前……!」



 俺が思わず詰め寄れば、凛斗は冷めた目で見返した。



「ショックを受けるなら早いほうがいい」


「勝手に決めるなよ」



 俺は「違うかもしれないだろ」と反論するが、どうしても調子が弱々しくなってしまう。そんな俺に、凛斗は苦いものでも飲み下したような顔をした。



「颯斗だってわかるだろ。後になって知らされるのが、どれだけ辛いか」



 何も言えなくなった俺に、凛斗は背を向けて小説を本棚に戻した。
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