借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
二人分きっちり用意したけど、片方の──凛斗くんの分を見てひっそりため息を吐く。
今日は食べてくれるかな……。
私がここで炊事や洗濯や掃除を任されるようになってから、凛斗くんは私の料理に手をつけたことはない。
挨拶をしても無視されるし、ほぼいないものとして扱われる。
それでもこうしてがんばれるのは、安田さんを始め、颯斗くんや房宗さんがよくしてくれるからだ。
本当に、受け入れてくれた彼らには感謝しかない。
「和泉ちゃん、おはよ」
「おはようございます」
「だから、敬語はいいって」
考えごとをしていると、颯斗くんが階段を降りてきた。爽やかな王子様フェイスが眩しい。
彼はいつも、「同い年なんだしタメ口でいいよ」と言ってくれる。だとしても、ここで働いている限りは敬語を使うべきだ。それは必要な線引きで常識だと思うんだけど、颯斗くんはなんとも言えない顔をする。