借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜


「同い年の子から“坊っちゃん”呼びはやだよ」


「では“颯斗様”とお呼びしましょうか?」



 私がクスクスと笑えば、「意地悪だなぁ」と返される。楽しい会話だけど、朝は忙しいのだ。用件はさくっと伝えないと。



「お弁当はいつも通り玄関に置いておきますね」


「うん、いつもありがとう」



 颯斗くんはにっこりと笑ったかと思うと、すぐに「それとね」と声をひそめた。



「凛斗の分はもう用意しなくていいから。食材がもったいない」


「……要らないのであれば私の食事になりますし、おやつは安田さんが喜んで食べてくれますから」



 この間はチーズハットグを作ったんだけど、やっぱり凛斗くんは食べてくれなかった。もう凛斗くんのおやつは安田さん用と言ってもいいかもしれない。


 安田さんは、「屋台じゃなくても食えるなんて!」と感激していた。自分でも作ってみたくなったらしく、レシピを聞かれたので簡単に説明した。
< 29 / 79 >

この作品をシェア

pagetop