借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜


「和泉ちゃん」



 いきなり颯斗くんに手を取られてギュッと握られた。



「あの、汚いですから」


 
 反射的に手を離そうとするけど、颯斗くんはもう一方の手も取って包み込むように握り直した。


 困惑して彼の顔を見れば、真剣な眼差しとぶつかる。



「あの、坊っちゃん……?」



 私が声をかけると、颯斗くんははっきりとした口調で言った。



「汚くなんかない」


「汚いでしょう、荒れてるし」


「がんばってる人の綺麗な手だよ」



 そう言われて自分の手を見た。颯斗くんの大きくて形のいい指に隠れているけれど、同世代の子に比べればボロボロで、“綺麗”とはほど遠い。



「俺は和泉ちゃんの味方だから」


「……ありがとうございます」



 颯斗くんは優しい人だ。私を房宗さんの書斎まで案内してくれたのも彼だし、こうして傷だらけの手まで褒めてくれるから。

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