借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
さて。
私は椅子に座りながら勉強道具を取り出した。
急に休みになっても、やることと言ったら勉強ぐらいしかない。
正直、休みをもらうよりも忙しいほうがいい。何も考えずに──両親のことを考えずにすむ。
だから、休みの日はほとんど勉強して過ごしていた。学校や資格の勉強をしているだけの私を気遣って、颯斗くんは私を連れ出してくれたりする。自分も気分転換したいと言って。
お金のかからない美術館や博物館、植物園に連れていってくれて、こっちが気にならないようにしてくれているんだと思えば、嬉しいのと同時にやっぱり申し訳なくなってしまう。
「私が普通の女の子だったらな……」
独り言を呟いてみる。言葉にしてみたら、余計に“もしもの自分”を考えてしまう。
たとえば、颯斗くんと同じ高校の同級生だったら……。いや、うん、話しかけるのもできないで卒業になるかな。