借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜


 自分の身のほどくらい、ちゃんと弁えている。美人でも可愛くもない。センスがあるわけでもない。同い年の子より自信があるのは家事だけ。


 そんな私が、あんな綺麗な男の子と仲良くなるには奇跡でも起こらないと無理だ。


 ……今の状況がある意味奇跡かもしれない。



「あー、もうやめやめ」



 私は声に出して無理に気持ちを切り替えた。学校の図書館で借りてきた簿記の本を手に、簿記の基本原則についておさらいする。



「単式簿記は…… 日付や入金額の入力で……儲けや財産についてはわからないから」



 だから、原因と結果に注目した複式簿記が出てきた。これを貸借対照表と損益計算書に反映させる仕組みで……。


 本とノートを見比べながら復習をしていると、ドアをコンコンと叩く音がした。


 安田さんかな?


 夕食は作っておいたタネを焼くだけだし、どうしたんだろう?


 悩んでも始まらない。私は返事をしながらドア開けた。
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