借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
メイドと誤算
「和泉ちゃん、今大丈夫?」
学校から帰ったばかりだろう颯斗くんが目の前にいた。いつも見ているのに、ジーンズにパーカーと普段着でもかっこいい。くそぅ、イケメンめ。
意味のわからない八つ当たりを心の中でぶつけて、「大丈夫で……うん大丈夫」と返した。仕事が休みのときまで敬語はやめてほしいと、颯斗くんから懇願されているので。
彼は穏やかな表情で私に訊いてきた。
「ハンドクリーム、もう買った?」
「ううん、これから」
授業が始まる18時までにはまだ時間がある。むしろ登校中に買ってしまおうと思っていた。
「それなら今から行かない? 俺も買いたいものあるし」
「んー、いいよ、ちょっと待ってて」
私は準備していた鞄に資格の本やノートを詰め込んだ。定時制に制服や指定のバッグはないから、普段着のまま行っても平気なのがありがたい。
私は十数秒で支度をすませ、颯斗くんと一緒に房宗家を出た。