借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
運の良いことに他のお客さんはいなくて、大急ぎで買い物をすませる。そのままあの二人と鉢合わせしないように駅まで走った。
後ろから声が聞こえたような気がするけど、立ち止まる勇気はなかった。
タイミングよく到着した電車に飛び乗って、座席シートに座りひと息吐いた。
このときに始めて、息を止めていたんだと気づいた。
周囲を目だけ動かしてチラチラ見ても、あの子と同じ制服の子はいない。
強張っていた手から、ゆっくりと力が抜ける。
私は目を閉じて、さっきまでの自分の振る舞いを頭の中でリピートしてみる。
声は震えていなかった?
もし震えていても、気づかれなかった?
震えていませんように。
震えていても、気づかれていませんように。
そう祈った。
何に?
……わからない。
それでも、神様ではないことは確かだった。