借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
願いもむなしく、そこには凛斗くんが絶対零度の眼差しで仁王立ちをしていた。
「あのぉ……いつ頃からいらしたんですか?」
「本のホコリを取ろうとしてる辺り」
わりと最初の辺りかぁ。そっかぁ。
凛斗くんが一歩、部屋へと足を踏み入れる。
「そのぉ……今日は、学校は……?」
「早退してきた。寒気と頭痛がひどくて」
また一歩、冷え冷えした空気が近づく。
「あぁ……風邪ですかね?」
「今のでもっとひどくなったよ」
もう一歩。凍った黒い眼差しが私の足を縫い止めた。
凛斗くんの整った顔が、息のかかりそうなほど近くにある。
「大変、申し訳ございませんでした」
笑ってしまうくらい情けない声が、部屋を震わせた。
返事はない。
獲物を品定めするような目で見ていると思ったら、凛斗くんは急に優しい笑顔を見せた。
「借りてく?」