借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜


 一瞬、言われた意味がわからなかった。



「その本」



 力を入れていた右手を見やる。鮮やかな青に、魚影が描かれた表紙がひしゃげそうになっていた。


 両手で本の下部を握り、胸の辺りまで持ち上げる。


 この本を、借りられるかもしれない?


 心が天に昇りそうになる。だけどコンマ数秒で足先をつかんで地面まで戻した。



「……私は何をすればいいんですか?」



 凛斗くんが無料で貸してくれるはずない。そう予測して先回りすれば、凛斗くんが口の端に笑みを乗せる。


 そうしていると、颯斗くんとそっくりだな。


 頭のどこかでそう考えながら、彼の唇が動くのを注視する。



「察しがいいな」



 そう言い終わるか終わらないうちに、私の視界が回転した。


 背中には柔らかい、絶対に本棚じゃない感覚がする。別館で使わせてもらっているベッドみたいな……。


 いやベッドだよ。現実逃避してる場合じゃないよ。
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