借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
自分にノリ突っ込みをかまして、私を押し倒した凛斗くんの顔をじぃっと見つめる。
「ちょっとでいいから、相手してよ」
私は唾を飲み込んでから、努めて冷静に諭した。
「冗談はやめてください」
凛斗くんは小馬鹿にしたように笑った。腹立つけどカッコいいな。くそぅ。
「慰めてやるって言ってんだよ」
「貴方に慰めてもらう理由がありません」
「あるだろ」
私はきっぱりお断りしているのに、耳元に唇を寄せて、呪いの言葉を吐いた。
「颯斗が好きなんだろ?」
文庫本を握る指に力がこもった。本は絶対にひしゃげているだろう。
「違います」
「やめといたほうがいいよ。あいつ長男だから」
「違うと言って……」
「将来はそれなりの家の女と結婚する予定なんだよ」
聞いてもいないのに、「大変だよなぁ」と他人事のような言い方をしてケラケラ笑った。