借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
「お前……」
凛斗くんは絶句して私の目を見た。余裕ぶった顔が崩れて瞳が揺れている。
視界の隅には、震える腕が映った。
「どうしたの? 私とシたいんでしょ?」
私が目を逸らさずに聞けば、猫のようなつり目が不思議な色を帯びる。
唇は真一文字に結ばれて、手も足も動かない。
そりゃできないよね、追い出したくてたまらない、大嫌いな女なんかと。正直、押し倒すのも辛いはずだ。
ちょっとスッキリしたな、と思ったら部屋のドアが開いた。
「坊っちゃん、今日のことで──」
安田さんはそう言いかけたきり、口を開けたまま凍りついてしまった。彫像のように指一つ動かしていないけど、顔色はどんどん白くなってゆく。
私は凛斗くんに押し倒されたまま、冷静に言い切った。
「私から誘いました」
頭上で、凛斗くんが息を呑む音が聞こえた。