借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜

メイドと誤算、その後



 俺はひしゃげた文庫本を持ってベッドに座っていた。


 颯斗からも安田からも、父さんからも「本当にこれでいいのか」と再三訊かれたけど、俺からすれば大歓迎に決まってる。


 父さんのことだから見張りをつけておくだろうし、あいつがこれから住むのは、そもそも房宗家が所有するアパートだ。


 最初はこの家に住まわせることで、あいつの親が接触してきたらすぐ捕まえられるようにする算段だった。父さんが考えそうなことだ。


 だけど、あいつは俺や父さんが思っているより健気で……この家の家事を常に率先してやってくれていたから、皆して妙な情を感じてしまった。


 親に捨てられるどころか売られて、その先でも文句一つ言わずにがんばる女の子。


 大体の人間は同情するんじゃないだろうか。


 でも同情するだけだ。大半は助けようとしない。


 三人とも同じだ。優しい言葉をかけたり、家事を手伝ったり、お小遣いを渡したりしても、根本的な解決はしない。
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