借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
壊れた日常
縦書きの手紙を読んでいた。
手紙は封筒にも入っていなかった。「和泉へ」と書かれた少し角張った字を追っていくと、「安田さんがいらしたら、もう一通の手紙を渡してね。お母さんとお父さんより」で終わっていた。
もう一通の、ちゃんと封筒に入った手紙を見る。真っ白い封筒の表には、「安田さんへ」とやっぱり少し角張った字で書かれていた。
その手紙を乗せるちゃぶ台に触れる。汚れやシミが目立つ、こげ茶色のちゃぶ台。ここで家族一緒にご飯を食べたのは、今朝のことだったのに。
こじんまりした部屋を見回す。少なかった家具はほぼなくなって、あるのはこのちゃぶ台と、私のわずかな私物だけ。そこに、夕日が差し込んで全てをオレンジ色に染めていた。
築ウン十年の古いアパート。
その一角に、私たち家族の部屋があった。
思い出にふけっていると、ドアをどんどんと叩く音が聞こえてきた。「鈴村さーん」と知らない男の人の声も響く。
ああ、この人がきっと安田さんだ。
そんな予感がした。