借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
チャンスは、わりとすぐにやってきた。
嘘をついて早退した日に、あいつが俺の部屋で本を手に真剣な眼差しを向けているのを見つけた。
父さんに俺の私物を盗もうとしたと告げ口しない代わりに、この家と二度と関わるなと言うつもりだった。
けれど実際に出てきたのは。
「借りてく?」
いやなんだ「借りてく?」って、そんな気安い間柄じゃないだろ。
軌道修正するために、俺は細っこい肩をつかんでベッドに押し倒した。ギョッとするほど身体が薄い。栄養失調とかじゃないよな。
心の中で色々と考えながら、口は目の前の女を侮辱する言葉を吐き続ける。これで怯えて、トラウマになって房宗家に今後一切近づかなくなればいい。
こいつが俺を押し退けて、逃げ出すのを今か今かと待つ。
「いいよ。シよう」
……今なんて言った?
理解が追いつかない俺に、その口からは「どうしたの? シたいんでしょ?」ってとんでもない台詞が飛び出てきた。