借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜


 それなのに、「自分から誘った」と言い張って話はちっとも進まない。全部俺のせいにしてしまえば楽なのに、どうしてそうしないんだろう。


 ……挙げ句に、颯斗の代わりに俺を利用しようとした、とまで言いやがった。


 そんな器用な真似ができるとは思えない。できるのであれば、ここで自分を加害者のように扱ったりはしない。何を考えているのかさっぱりだ。


 ──でも、これが本心だとしたら?


 双子の俺を、颯斗の代わりにしようと本気で思っていたのだとしたら?


 そう考えたら、口が勝手に動いていた。



「この女追い出してくれよ! 親に言われて借金チャラにしようとしてるに決まってる!」



 俺の侮辱に、「違います!」とすぐに反応があった。


 そうだ、そのまま俺を糾弾しろ。


 俺は心の中でほくそ笑んだ。


 でも。



「私は颯斗くんが好きです」



 なんでだよ。

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