借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜

さよならを告げる



 その電話が来たのは、学校で授業を受けているときだった。


 ちょうど図書館で調べ物学習をしていて、本を探していた私に担任の先生が小走りで近づいてきた。



「お母さんが倒れたそうよ。お父さんから連絡があったの」



 心臓の音がやたらとうるさく響いて、しばらく何も考えられなかった。


 私を、売った人たち。


 それでも、虐げられたことなんて一度もなくて。


 ずっと優しくて、「貧乏させてすまない」が口癖のような二人だった。


 今でも、その笑顔を思い出せる。



「鈴村さん、しっかりして!」



 目の前が暗くなりかけて、先生に支えられる。



「先生、お父さん、は……」


「車で校門まで迎えに行くって……先生が校門までついていくから、行きましょう」



 先生に言われるがまま、校門まで連れられて、お父さんが運転する車に乗った。


 後部座席に座って、シートベルトを締めると同時に発進した。
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