借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜


 私もお父さんも喋らないから、車の中は静かだった。


 もし会えたら訊きたいことがたくさんあったのに、いざ目の前にすると舌が動かない。


 一体何があったの?


 私にできることはなかったの?


 どうして私も連れていってくれなかったの?


 疑問だけがお腹の辺りで堂々巡りして、なんとなく気分が悪くなってしまった。



「和泉」



 お父さんの声がぽつりと落ちた。


 波紋が広がるように、気分が良くなっていく。


 そろそろとバックミラーに視線を送る。



「苦労をかけたね」



 涙で視界がにじんで、慌てて瞬きを繰り返した。



「ううん、私は大丈夫。お父さんたちこそ大変だったでしょ?」


「いいや、お前の苦労に比べたらなんてことないさ」


「でもお母さん、倒れちゃったんだよね?」


「大丈夫だ。家で安静にしていれば良くなるから」



 良かった。そこまで悪くないんだ。


 私は下を向いて目元をぬぐった。
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