借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜


 店に入った私たちは、仲居さんに案内されて竹の間に通された。内装は木材の良さを全面に押し出した形で、清々しい香りが漂ってきそうだった。



「和泉!」



 部屋に入るなり、お母さんが抱きついてきた。ふっくらしているような感じで、なぜだか違和感があった。


 でも、それを吹き飛ばすくらい嬉しかった。



「お母さん、もう元気になったんだね」


「うん、和泉の顔見たら元気になっちゃった」



 そう言って目を潤ませるお母さんに手を引かれ、お座敷の座椅子に座らせられた。



「和泉のために、最高級のコースを頼んだの!」



 お母さんは私の正面に座り、お父さんはその横に座った。



「ここは海鮮がおいしいからね。きっと和泉も気にいるよ」



 海鮮、と聞いて、私は房宗家のキッチンを思い出した。


 鮭や白身魚を焼くくらいしかできなかったけど、蒸したり揚げたりしてみたかったな……。
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