借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜
 

 複数人の、大きな足音が響く。それに比例して私の心臓も大きな音を立てた。



「せめて女だけでも連れてくぞ」


「房宗め、どこで漏れた」


「おい、女がいないぞ!?」



 男の人たちが苛立っているのが手に取るようにわかる。


 私は目をつむって、両手を握り祈った。


 お願い、どうか騙されてくれますように。



「ここか!?」


「いねぇな……おい! 隠れてないで出てこい!」


「なぁ、こっから逃げたんじゃないか?」



 思わず深呼吸をしそうになって、慌てて口元を押さえた。



「ここ二階だぞ?」


「逃げられない場所でもないだろ」


「こっから屋根伝いに裏に回ったか?」



 部屋の中を歩き回る音がして、彼らが押し入れに手をかける瞬間を考えてしまう。


 小刻みに身体が震え出して、暗闇を必死に見つめ続けた。



「ここで話していてもしょうがない」


「そうだな、俺はこの部屋をもっとよく調べる」
< 72 / 79 >

この作品をシェア

pagetop