借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜


 そう男の人が仲間に言うのを聞いて、思考も身体も凍りついた。


 せめてもの抵抗で、私は自分の耳をふさいで目を強くつむった。


 十秒。


 二十秒。


 三十秒。


 ……そこそこ時間が経ったと思うのに、押し入れの襖は閉まったままだ。


 別の場所を探してる?


 それなら、一か八かここから廊下に出て逃げ出してみよう。


 もしかしたら、房宗家の人に会えるかもしれない。


 そう決心して襖に手を伸ばしたら、待ちかまえていたように一瞬で開いた。


 眩しさに数瞬だけ目がくらんで、目をつむってしまう。



「無事かよ」



 ぶっきらぼうな声が、私の耳を打った。


 恐る恐る目を開ければ。



「凛斗くん……?」


「他の誰だっていうんだよ」



 不機嫌そうな凛斗くんがそこにいた。



「ほら、着ろ」



 凛斗くんは苦々しい顔をすると、自分が着ていた上着を私に被せた。
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