借金のカタに売られたら、溺愛メイドになりました〜双子に翻弄されています〜


「凛斗くんが……?」


「そう。安田さんが見たって」



 私は居ても立ってもいられず、凛斗くんの部屋へ行こうと立ち上がった。



「お礼、言ってくる!」


「うん、あいつ喜ぶよ」



 颯斗くんの応援を背に、私は凛斗くんの部屋の前までスキップしそうな調子でやって来た。


 少し咳払いをして、一回だけ深呼吸をしてドアをノックする。



「どうぞ……って何だよ?」



 凛斗くんはツンとした顔で冷たい声を出した。


 でも、もう怖くない。



「リップクリーム、お礼言ってなかったと思って」



 凛斗くんが口をへの字にした。



「ありがとう。嫌われてると思ったから、嬉しかった」


「嫌いだなんて言ってねぇよ、むしろ──」



 その先は聞けなかった。



「二人とも、安田さんがチーズハットグ作ったから食べてくれって!」



 颯斗くんが部屋に飛び込んできたからだ。
< 78 / 79 >

この作品をシェア

pagetop