あなたを守りたかったから 〜彼女を愛した二人の男〜
 彼女は半年前まで美容部員として化粧品メーカーで働いていた。
 そのときの知識やテクニックを活かしてネット配信を始めたら運良く人気が出て、広告がついたり企業とのコラボ案件が来るようになった。

「やっだあ!」
 嬌声が聞こえてそちらを見ると、メガネのイケメンが女性たちに囲まれていた。
 女性には見覚えがあった。クラスのカースト上位の女子、苫田魅璃華(とまたみりか)だ。あのときから変わらず今も派手派手しい。

「巽くん、すごいイケメンになっちゃってびっくりしたよ。しかも弁護士だって! それで、魅璃華たちが色めきたっちゃって。高校のときはキモメガネってあだ名つけていじめてたくせにねえ」
「へえ」
 イケメン弁護士。パワーワードなのかもしれない、と彼女は思った。

 彼は優しげに微笑を浮かべて彼女らの相手をしている。黒髪はぴしっとしていて、生真面目さが出ているが、おしゃれ感もあって絶妙だ。困惑を浮かべる眉はきれいに整えられているし、肌は女子に負けないくらいにつるつるだ。スーツとメガネのせいか、弁護士感がさらに強く出ている気がする。

「なんか、ロースクールにも行かずに司法試験に合格したって。すごくない?」
「普通は大学を卒業してから大学院に行って、それから受験らしいね」
 彼は大学在学中に予備試験に合格し、司法試験を受け、合格した。

「あれ? もしかして豚女?」
 声がして、奏奈はふり向いた。
 そこにいた男性を見て悲鳴をあげかけ、慌てて口を押さえた。
 彼は鋭い目で奏奈を睨む。
 彼女は震えながら高校時代を思い出した。



 高校時代、奏奈は目立たない地味な存在だった。
 二年生のクラス替えのときに友達と離れてしまい、教室で浮いていた。

 そんなころ、古江剛毅(ふるえごうき)にいじめられるようになった。

 豚女と呼ばれ、お弁当をとられることはよくあった。昼食のパンを買うためのパシリにされたこともある。
 最終的に毎日お弁当を二人分作って一つを彼に渡した。もちろん、弁当代などもらえなかった。
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