あなたを守りたかったから 〜彼女を愛した二人の男〜

「言うなよ！」
「こいつ、守ってたつもりなんだよ！」
「は？」
　奏奈は驚いて目を見開いた。

「ばか、言うなって！」
　剛毅は慌てるが、酔っている和馬はかまわず続ける。
「こいつ、高校時代、お前のことが好きだったんだよ！」
　告げられた言葉に、奏奈は唖然とした。

「魅璃華とかの一部の女子がさ、あんたのこと気に入らないからっていじめようとしていたことに気づいてさ。守るためにあんたにからんでたってわけ」
「守るためにいじめるって……どうして？」

「こいつ、いろいろ怖いじゃん？　こいつの獲物に手を出したら自分がやられるって怖がっていじめられずにすむだろうって」
「そんな理由があったの……」
「あのときからずっと一途に、今でもあんたのこと好きなんだよ。泣けるよねえ」
「ばかやろう！」
　剛毅が怒鳴ると、和馬は笑った。

「……本当なの？」
　奏奈は驚いて男を見る。
　剛毅は顔を赤くしてうつむき、やがて、うなずいた。
「かっこ悪。告白くらい、自分の口でしたかった」
「君が弁当を作ってくれるって、すっげえ喜んでたよ」
　奏奈はただただ驚いて彼を見る。

「今、彼氏いる？　いなかったらつきあってやりなよ。こいつ、不器用だけどいいやつだよ。勤め先は一流広告会社でさ」
「それ以上はやめろよ」
　剛毅は和馬を止めると、奏奈の手をとってすくっと立ち上がった。手を引っ張られ、仕方なく奏奈も立ち上がる。

　異様な雰囲気を察して、周囲のみんなが雑談をやめて彼女たちを見る。
「春日川奏奈、好きだ、つきあってくれ！」
　男は叫ぶようにして言い、頭を下げた。
　奏奈は呆然とその頭を見下ろしていた。

　こんなことが起きるなんて、予想もしていなかった。
　ふと見ると、女子たちと、弁護士になった巽信士(たつみしんじ)がこちらを見ていた。