あなたを守りたかったから 〜彼女を愛した二人の男〜
「帰ろうか」
「うん」
 彼に促され、彼女は頷く。
 帰り支度を手早く行い、会費を幹事に渡して靴をはく。
 信士も同様に座敷を降りた。
 靴をはいたところで、魅璃華が来た。

「待って、そんな整形女と一緒に帰るの?」
 奏奈と信士はピタッと動きを止めた。
「大人なんだから、一人で帰れるんじゃない? 信士くんは残って、みんなと飲みましょうよ」
 媚びるように魅璃華が言う。

 奏奈はにっこりと笑った。
「二重の整形したんだね。似合うよ、かわいい」
 奏奈が褒めると、彼女は顔をひきつらせた。
 彼女だけじゃない。
 周囲のみんなが凍りついたように固まった。

「あれ? なんか変なこと言った?」
「せ、整形なんてしてないわよ!」
「私、美容の仕事してたから見たらわかるの。高校のときはアイプチだったよね。別に隠さなくて良いんじゃないの? 整形って別に悪じゃないじゃない」
 奏奈は知っている。彼女が整形をバカにしていたことを。

「頬骨も削って鼻もいじってあるね。かなりお金かかったんじゃない?」
「う、うるさいわね! 変なこと言わないでよ! 私のことバカにしてるの!?」
「私は侮辱の意図はなかったけど」
 困惑したように奏奈は言う。

「侮辱……そうよ、侮辱罪よ! 弁護士なんだから、こいつを訴えてよ!」
 魅璃華が信士に言う。
「整形を指摘することが侮辱になるなら、奏奈が整形してるんじゃないかと言った君の最初の発言はどうなる? 彼女を侮辱する意図があったことになるが」
 指摘されて、魅璃華は黙る。

「どうする? この女、訴える?」
 信士が奏奈の肩を抱く。
「どうしようかな」
 彼女はいたずらっぽく笑う。魅璃華は青ざめて二人を見た。

「さっきのは冗談よ」
「冗談っていえばなんでも許されると思うなよ」
 信士が言うと、魅璃華は体を震わせた。
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