親愛なる魔王の君へ＃外伝～魔王になったので、世界平和を目指します！～

煙が晴れると、モンスターはいなくなっていた。その代わり、少しはねた黒髪に赤い目の男性がいる。

男性には獣耳と尻尾が生えていて、俺は「え？」と声を出した。

「……驚かせてすみません。私、上手いこと人間に擬態出来なくて……もっと、練習が必要ですね。あはは……」

そう言って、男性は苦笑する。そして、男性はハッとした顔をした。

「私としたことが……すみません。私、人間に擬態出来る特殊な力を持っているんです。それのせいで、群れを追い出されてしまって……今回、皆さんの前でこの力を使ったのは、皆さんにお礼が言いたくて……助けていただいて、ありがとうございました」

ペコり、と男性は頭を下げる。

……人間に擬態する、力……。

「ねぇ、おじいちゃん……そんな力を持つモンスターっているの？」

「いや、今回が初めてだ……でも、ごく稀に……不思議な力を持ったモンスターが、誕生することもあるらしいよ。それが、彼……だったのかもね」

おじいちゃんの答えに、俺は「ふぅん」と返すと男性を見た。

「……そういや、君。群れを追い出されたって言っていたよね？行く宛ては、あるのかい？」

おじいちゃんが問いかけると、男性は頭を横に振る。

「……なら、この家で暮らさないか？この家には、色んな種族のモンスターがいる。君も、すぐに馴染めるだろう」