どこの誰よりも、先生を愛してる。
一緒が良い
「愛理と圭司は、何か係やる?」
「私は応援控えかぁ」
「それ、係やらない人が全員所属するやつ」
「俺も応援控え」
「えぇ」
やる気が全く無い2人。なんて思う私もやる気なんて無いけれど。
「そういう菜都は?」
「応援控え」
そう言って、3人で笑った。
「はい、始めるぞ」
出席簿と人数分のプリントを持って現れた河原先生その姿を見ただけで心臓は簡単に飛び跳ねる。
「さて。朝、予告した通りだが……今から体育祭の係を決める」
そう言いながら先生は黒板に係名を書き始めた。
応援・得点・救護・放送・準備・運営・繰出。
応援だけ2人で、あとは1人ずつだ。
「2回目だから、係の内容は分かるよな。……ってことで。はい、立候補」
意外と立候補者がいて、ペース良く係が決まっていく。応援や放送は人気でじゃんけんをする程だ。
ただ、得点だけは何故か立候補者がいなかった。
「良い感じだな。だけど、何で得点だけいないんだよ」
まだ決まっていない人達は先生から目線を逸らす。
確か得点って、前日準備はほとんど無いけれど、当日がめちゃくちゃ忙しかったはず。去年、得点係をした人が嘆いていたような……。
「……おい、得点も誰かがやらないといけないんだぞ。ったく。寄りによって俺が担当の係だけ持て余すなよ」
「……ん?」
その言葉に、思わず声が漏れた。そして愛理と圭司の2人も私の方を向く。
『俺が担当の係』
「………」
心拍数がどんどん上がる感覚がした。
震える体を抑えながら、得点係の忙しさと河原先生を心の天秤にかける。
その天秤は容易に河原先生の方へ傾いた。
忙しいことよりも、河原先生と一緒に居られるなら、その方が良い。
「………っ」
願ってもいなかったチャンス到来。
そう思って、勢いよく手を挙げた。
「せ、先生!! 私が得点係やります!」
「………」
先生は私を見て、目を見開いた。
そして、やってしまった……とでも言いたそうな表情をして……。
「うい……」
少し嫌そうに渋々と、得点の下に私の名前を書いた。