どこの誰よりも、先生を愛してる。


 結局、ロングホームルーム内に皆の面談は終わらなかった。


 放課後、残された最後の私。
 柚木先生には部活に遅れる旨を伝えて、教室で待機をしていた。




「……平澤、すまんな」
「……」



 一旦職員室に戻っていた先生。
 厚めのノートと筆記用具を持って、教室に戻って来た。

 私の隣に座る先生。
 優しそうに口角を上げている表情を見て、思わず私は唇を噛んでしまう。



「早速なんだが、進路は……大学進学って希望票に書いてあるけれど。間違いないか?」
「……はい」
「因みに、行きたい大学とか、何を学びたいとか。そう言うのは決まっている?」
「いいえ」
「……そりゃ、出遅れているな」
「……」



 高校入学してから、河原先生のことばかりで。進路なんて全然考えてなくて。私自身、自分が何をしたいのかも……全く分からない。



「まぁ、でも」



 そう言って手を叩き、また微笑む河原先生。



「大丈夫、今から取り戻せば。相談にも乗るし、また進路について……教えてな」
「……はい」



 胸が……痛い。

 『好き』の真相を聞き出してやると、心に決めていたのに。いざ言葉に出そうとすると、何故か胸が痛んで……苦しい。


「……じゃあ、他になんか話しておきたいことはあるか?」
「………」
「平澤?」
「…………っ」





 今しか、ない。


 ここしかない。


 そう思い、意を決した。




< 103 / 116 >

この作品をシェア

pagetop