どこの誰よりも、先生を愛してる。


「……ねぇ、先生。前に、私のこと好きだと言ってくれたではありませんか」
「……あ、あぁ」



 切り出した話題に目を開き、少しだけ目線を逸らした河原先生。


 苦しくて、痛くて。

 抑えきれない心臓に耐えてもらいながら、私も頑張って言葉を継ぐ。



「それ……今も変わっていないなら、お付き合いして欲しいです」


 そう言うと、先生は少しだけ眉間に皺を寄せて唇を噛みしめた。


「ねぇ、両想いでしょ。私、先生のことが大好きです」
「……知っている」




 ゆっくりと……小さく吐き出された言葉。




「でも……駄目だ。両想いから先には進めない」
「………」




 その言葉に、頭を強く殴られたかのような感覚がした。

 両想いなのに付き合えない。




 それなのに、先生は何で……好きだと言ったのだろう。




「………」





 段々と体が震え始め、涙が零れる。

 自分の中に湧き上がる感情が……抑えきれなくなった。



「どうして、先生。どうして、両想いなのに……!」
「両想いだからこそ、一緒には居られない。駄目なんだよ、24歳差は……!」
「駄目じゃない!! 私、河原先生しか愛せない!」
「馬鹿なこと言うな。これからの長い人生、良い人が絶対に見つかる」
「見つからなくていい! 私は、河原先生が良い!!」



 椅子から立ち上がった河原先生は、泣きじゃくる私の顔をハンカチで拭う。
 そして私の腕を引っ張って立ち上がらせ、力強く抱きしめてくれた。


 その腕がまた温かくて、余計に涙が零れる。



「河原先生、好き。どこの誰よりも、先生を愛しています……」
「俺も好きだよ、平澤。お前を愛してる……」



 両想いなのに、交際に踏み出せないもどかしさ。

 好きで、好きでどうしようも無いのに。超えられない24歳差の壁。

 悲しくて、辛くて、苦しくて、涙が止まらない。



「何で、24年も遅く生まれてきてしまったんだろう……」



 そんな、元も子もないことをつい思ってしまう。




< 104 / 116 >

この作品をシェア

pagetop