どこの誰よりも、先生を愛してる。

将来の夢



 3年生になり、新しく赴任してきた女の先生が担任になった。


 河原先生は1年生の担任。
 数学は変わらず先生に教えてもらうけれど……。それだけ。


 あの日の面談以降、個別の関わりは無くなり
 本当に“普通の先生と生徒”として過ごしていた。





「……柚木先生、お願いがあります」



 放課後のボランティア部。
 今年度も新入部員は入って来ず、昨年度と同様、私と柚木先生の2人での活動だ。


 因みに。私が卒業したら、ボランティア部は廃部になるらしい。



「……お願い?」



 柚木先生とも、“普通の先生と生徒”に戻れていた。
 あれから抱きしめたり、頭に触れたりして来ない。

 先生自身の感情は……知らないけれど……。



「平澤さん。お願いとは、何ですか?」



 柚木先生と並んで草を抜いている時。
 ずっと考えていた……”あるお願い事”をすることにした。



「私、教師を目指します。国語教師になりたいので、勉強を教えてください」
「…………えっ」



 抜いた草を持ったままフリーズしてしまった先生。

 少し何かを考えた後、言葉を継ぐ。



「え、国語教師になりたいのですか?」
「はいっ」



 勉強は嫌いだけど、国語だけはギリギリ好きと言えるかな……。
 成績も一番良いし。

 そう思い、私は国語教師を目指すことにしたのだ。



「何でまた……。教師は大変ですよ」
「そんな夢の無いことを言わないで下さい」



 お互い顔を見ず、目線は雑草に向けたまま会話をする。



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