どこの誰よりも、先生を愛してる。





「…………で、遂に再会ってわけですね」
「……」
「河原先生ではなく、僕と」
「……そうですね」






 高校教師になって6年目。
 私が28歳になった時、遂に柚木先生と同じ学校になった。


 県立佐倉中央高校。


 母校である佐倉北高校からそんなに離れていない場所というのが、また何とも言えない。






 私はこの学校に赴任して2年目。
 柚木先生が今日、ここに赴任してきた。



「柚木先生。見た目が全然変わっていませんけれど、何歳になったんですか?」
「僕は37歳です」
「うわ、アラフォー間近……」
「……そう言いますけど。今の河原先生はアラフィフだと思います」
「それは良いんです」
「……意味が分かりませんね」




 佐倉中央高校の国語科準備室。

 この学校の国語教師は、今日から私と柚木先生の2人。



 ここで2人きりの空間だと、何だかボランティア部時代を思い出す。




「……草抜き、したくなります」
「そうですね。もう10年も前のことなのに、鮮明に思い出されます。平澤さんは、草抜きのプロでした」
「今も変わり無いかもです」
「そうですか。今度見せてください」
「良いですよ。何なら生徒に指導しましょうか」


 そう言って、お互いに微笑み合った。




 何も変わっていない。
 柚木先生との関係。


 自分がまるで生徒かのような錯覚をしてしまうのが、少々問題だが……。




「さて、赴任1日目なので忙しいです。荷物運んだり……頑張りますよ!」
「柚木先生、お手伝いします」
「ありがとうございます、平澤さん」


 柚木先生はそう言って固まり、ニヤッと微笑んだ。


「違いますね、平澤先生?」
「……柚木先生には、そう呼ばれたく無いです」
「ふふ、そうですか」




 柚木先生と一緒に国語科準備室を出て、廊下を歩く。佐倉北高校よりも大きな校舎を柚木先生と歩いているなんて、凄く不思議な気分がする。



「こんにちは〜」
「こんにちは」



 歩きながらたまにすれ違う、知らない先生。


 今年赴任してきた先生かな。
 教員間の紹介がまだ済んでいない為、柚木先生以外に誰が赴任してきたのか……まだ全然分からない。





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