どこの誰よりも、先生を愛してる。
大好きな人
「……しかし、柚木先生。本当にありがとうございました。教員になってからお会いする機会がありませんでしたから。今日ここで再会できたこと嬉しく思います。やっとお礼を言えて良かったです」
「…………じゃあ、僕と結婚します?」
「はぁ!?」
「ふふ、河原先生より先に再会できましたから」
「ば、バカ言わないで下さい!」
パチン。と、軽く腕を叩く。それにまた柚木先生は優しく微笑んでくれた。
「私はもう、河原先生以外の人は無理です。河原先生しか愛せない」
「そんな恥ずかしい台詞、良く言いますね。しかも僕に向かって」
「そのくらい本気ってことです。今はもう、柚木先生も無理です」
「酷い……。本当に河原先生と再会できなければ良いのに」
「ふふ、まだ言っているんですね。……あ、こんにちは〜」
「……こんにちは」
「…………」
ふと、すれ違った人。
その香りに、身体が自然とその人の方を向いた。
向こうも何か感じたようで、私の方を振り返って見ていた。
「…………」
見間違えない、その姿。
「……え、待って。嘘でしょう?」
柚木先生のガッカリしたような声と、態度。
「柚木先生と……ひ、平澤?」
背が高くて細くて、スーツが良く似合う。
声が低くて、手は大きく、指は細長い。サラサラそうな長めの髪。
やる気の無さそうな、どんよりした目。黒縁の眼鏡。
何も、変わっていない。
ずっと会いたかった。
私の大好きな人。
「河原先生……」
「平澤……」
お互い手に持っていた物を落とし、勢いのまま抱きしめ合った。
「あ、ちょ……ここでは不味いですっ!!」
焦ってあたふたする柚木先生。
しかし、そんな柚木先生の言葉は、私たちに届かない。
「平澤……どういう事? 何でここにいるんだ?」
「ここの学校2年目で、国語担当しています」
「……教師になっていたのか?」
「そうです。河原先生と再会する為に、教師になったんですよ」
「…………」
その言葉に、河原先生は眼鏡を外して号泣をし始めた。