どこの誰よりも、先生を愛してる。
「平澤」
「河原先生」
今日も仕事終わりに、公園で先生と2人で会う。
ベンチに座り、お互い体にもたれ掛かりながら……指を絡ませ手を握る。
「……」
再会してからずっと思っていたけれど、今の河原先生からは仄かな香水の香りしかしない。
そういえば、タバコを吸っているような様子も無いし、どうしたのだろうか。
「……先生、タバコ止めたんですか?」
「あぁ、そうだ。お前が高校生の頃は1日40本も吸っていたのにな。今はもう全く吸っていない」
「凄い努力」
「いや、まぁ。平澤のおかげだよ。高校生にタバコへの興味関心を持たれては困るって…お前を通して感じたし。何より、平澤に副流煙を吸わせたくないって思ったら、止めるのもそんなに苦では無かった」
「………」
お互い見つめ合い……そっと唇を重ねる。
「河原先生……好き」
思わず漏れ出た言葉。その言葉に、河原先生もまた同じように言葉を発する。
「俺も好きだ、平澤」
力強く抱きしめて、先生の胸に顔を埋める。
年の差のこと。
関係のない第三者は、指摘するかもしれない。
けれど、それを踏まえた上で、今の関係がある私たち。
誰にも、邪魔させない。
誰にも、壊させない。
いつまでも。
どちらかが死ぬまで、ずっと隣で。
もう二度と、離れたくない。
「……」
先生。
河原先生。
私、平澤菜都は
どこの誰よりも、河原啓治先生を愛してる。
どこの誰よりも、先生を愛してる。 終