どこの誰よりも、先生を愛してる。

ここにいる



 行く宛もなく彷徨う。


 授業は受けたくないけれど、行く場所もない。

 本当に悔しい。悔し過ぎて、感情のやり場が無い。


「……悔しいな」


 グラウンドに続く石段に座り、自分の身体を抱く。


 先程感じた河原先生の体温と、腕の力強さ。その感覚がまだ鮮明に残っており、思わず目に涙が浮かぶ。


 抱きしめられて嬉しかった感情と、『魔が差した』と言われ傷付いた感情、そのどちらもが優位に立って胸が苦しい。




「……平澤さん、授業中ですよ。何しているのですか」
「えっ?」



 背後にある教室から聞こえてきた声。
 振り向くと、そこの窓から柚木先生が顔を覗かせていた。


「……柚木先生」


 その姿に、浮かんでいた涙が零れる。心配そうな柚木先生の表情に、より一層、胸が苦しくなった。


「平澤さん、こちらに来て下さい」
「……」


 小さく頷いてみる。
 行き場も無い私は、柚木先生の言葉に従うことにした。



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