どこの誰よりも、先生を愛してる。

気になる生徒 side 柚木

(side 柚木)



 男女の友情なんて成立しない。
 その理論は間違っていないのだと思う。


 幼馴染2人の想いを知ってしまった平澤さん。


 涙こそ流れていないけれど、その表情は驚きと悲しみと動揺と苦しみと……言い表せないくらい莫大な感情が渦巻いているようだ。


 勢いでボランティア部の部室に連れて来たものの、どうやら正解だったようだ。ここなら僕と平澤さん以外は誰も来ないし、何より落ち着けるはず。



「先生。私、どうすればいいのか分かりません……」
「どうもしなくて良いです。悩み苦しいかもしれませんが、平澤さんは自分らしく……」


 そう言って、平澤さんの頭を撫でる。一瞬驚いて全身を震わせたが、黙ったまま僕の手を受け入れてくれた。



「……」



 この前、感情が抑えきれなくなって平澤さんにキスをしてしまった。それについて平澤さんは何も言わないけれど、何だか距離を取られているような感じがしていた。


 だから、嬉しかったんだ。頭を撫でさせてくれたこと。


 僕は河原先生のような『魔が差した』とは言わない。キスをしたこと、後悔もしていない。



 しかし、三崎くんも平澤さんのことが好きと言うのは想定外だった。ただの幼馴染だと思っていたけれど、第三者には分からない部分があるものだ。




「……平澤さん。どうですか、落ち着きましたか?」
「はい。柚木先生、ありがとうございます」


 その言葉に胸が高鳴り苦しさを覚える。


 僕は、教師失格かもしれない。
 つい、自覚してしまった自分に嫌気が差す。



 僕は、平澤さんのことが好きだ―――……。



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