どこの誰よりも、先生を愛してる。
第3章 先生たちとの距離
変わりゆく関係
体育祭が終わり、いつもの日常が戻ってきた。
制服も夏服に完全移行し、ミンミンと鳴く蝉の声が響く学校。暑くてつい下敷きで扇いでしまう。
「菜都、移動教室だよ。行こ?」
「うん……」
あれから愛理と圭司は、会話をしなくなった。朝の登校時も、待ち合わせ場所に現れるのは愛理だけ。
圭司は他の男友達と一緒に行動をするようになっていた。
しかも、私はあの時のことを知らない前提。話を聞いていたなんて……言えない。
「最近、河原先生とはどうなの?」
「……どうって、別に何も無いよ。やっぱり気まずくてね。なかなか」
唐突に切り出された河原先生の話題。愛理は真っ直ぐ前を向いたまま呟いた。
「……前さ、菜都の恋は応援出来ないって言ったけどさ。やっぱりせっかくの片想いだから、菜都には上手く行ってほしいと思い始めたの。今更だけど、応援しても良いかな?」
「……」
愛理、方向転換。
私と河原先生をくっつけて、圭司に諦めさせようという魂胆に違いない。
見え見えだよ、愛理。
そう思うけれど……言えない。
「え、応援してくれるの!? めっちゃ嬉しい、心強いよ!」
温厚に済ませるなら、喜ぶ一択。
「菜都は河原先生のことを本気で好きみたいだからさぁ。止めた方が良いって言うのも酷だよ。ごめんね、気が付かなくて」
呼吸をするように言葉を吐く愛理。
その表情は、全然笑顔では無かった。