どこの誰よりも、先生を愛してる。


「おはよ、菜都」
「おはよう」


 約束した日曜日。

 『お互いの家に迎えに行ったりすると愛理に見つかるかもしれない』

 そういう理由で、圭司とは最寄り駅で待ち合わせをしていた。


「ごめんね、急に誘って」
「いや、良いの。暇だし」


 今日の目的地は電車で1時間半の場所にある水族館らしい。


 圭司がどうしても見たい魚がいるって言うんだけど……。


「どんな魚が見たいの?」
「え? ……えっと、クラゲ! ミズクラゲ!!」
「……クラゲは魚じゃないよ?」
「あ、そうだっけ? ハハハハハ」


 明らかに様子がおかしい。少し挙動不審な圭司にこちらもまた、調子が狂う……。



「ねぇ……圭司。もうすぐ県体じゃない? 部活はどうしたの」


そう問うと、圭司は小さく溜息をついた。


「……いや、まぁ。たまには息抜きしようかなって。菜都と出掛けたいって思って誘ったんだけど、嫌だった?」
「そんなこと無いよ。愛理が居ないのが気になるけど」
「っ………」


 私も大概、意地悪だ。辛そうな表情の圭司を見たいわけでは無いのに、つい口走ってしまう。


「……ま、まぁ。愛理はまた今度。今日は2人で楽しもうよ」


 引きつった笑顔で、そう言う圭司。


「……分かった」


 事情を全て知っているからこそ、現状が辛い。



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