どこの誰よりも、先生を愛してる。
「失礼します、2年の平澤です。河原先生…… 」
「今行く」
放課後、言われた通りに出頭した私。
河原先生は手招きをしながら、同じ階にある相談室に向かった。
「……さて、そこ座りな」
狭い相談室に置かれた、2セットの生徒机。そこに座るよう促された。
言われた通り大人しく座ると、先生も向かいに座って小さく口を開く。
近くで見る先生……素敵。
「平澤、昨日の話だけどさ」
「……」
「突然だったから、咄嗟に思いっきり突き放したけれど。取り敢えず、好意を抱いてくれていたことに感謝だけはしておこうと思って」
「……」
感謝って。
振られたのに、感謝なんてされても。
「……」
なんて答えれば良いのか分からない。
無言のまま黙り込んでいると、先生は少し困ったように頬を掻く。
「まぁ……その。好意は受け取れないけどさ。俺、教師でオッサンだし。でも嬉しかったっていう感情も少しあったからさ、感謝だけ伝えさせて貰おうと思って。それだけ」
「……」
諦めの悪い私。その言葉に、僅かな希望を感じた。
キリッと先生を見つめて、力強く……でも小声で、言葉を発する。
「……まだ、可能性があるってことですよね」
「え?」
「私ね、昨日振られたからって、別に先生のことを諦めたわけではないですよ」
「……」
「先生が好き。それは今も変わりません。……先生が嬉しかったと少しでも感じてくれたなら、尚更私は、河原先生のことを諦めません」
「いや、平澤……あのな……」
何か言いたげな先生だったが、これ以上の言葉は無用。
「では、失礼します」
先生が言いかけた言葉を遮って、私は相談室を飛び出した。