どこの誰よりも、先生を愛してる。

先生同士




「あれ、部室が開いてない……」


 夏休みも中盤。
 いつも通りボランティア部の部室に来たものの、今日は部屋の鍵が開いていなかった。


「柚木先生、まだ来ていないの?」


 珍しいこともあるものだ。そう思いながら、職員室に向かった。



 夏休みだからか、全然人のいない校内。
 静かな廊下を1人歩いていると、ある部屋の前に差し掛かった時、声が聞こえてきた。



 職員室に向かう途中に、教員宿直室がある。その声は、ここからだ。


「……?」


 日頃は気にならないその声。
 しかし静かだからか、宿直室からの声は大きく聞こえてきて思わず耳を澄ます。




「……今日も、行きませんか?」
「昨日も行っただろ……」
「私、河原先生になら毎日でも、抱かれたい」



「…………」


 目を見開き、思わず口元を手で覆う。


 中から聞こえてくる、艶っぽい女の人の声と、聞き馴染みのある低い声。


 女性の方は多分、溝本先生。男性の方は間違いなく河原先生だ。



「まだ朝だ……。盛るな」
「無理です。昨日のこと思い出すだけで、身体が言うことを聞きません……」
「馬鹿だな……」



 会話が聞こえなくなった宿直室からは、代わりに何かが重なり合う水音が聞こえ始めた。



「………………」



 この部屋で起きていること。

 それは、高校生の私でも……十分理解ができた。


「っ……」


 急に胸が締め付けられ、溢れるように涙が零れる始める。




 職員室に向かうのを止めて、私は急いでボランティア部の部室前に戻った。



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