どこの誰よりも、先生を愛してる。



 結局、草抜きをする時間なんてなかった。


 本当にずっと抱きしめてくれていた柚木先生。

 私が落ち着いてきたタイミングを見計らって、さっきどういう状況だったのかを聞いてきた。



「……え、宿直室から河原先生と溝本先生の会話が聞こえてきた?」
「……はい」



 聞いた会話、水音……。全て、話した。


 柚木先生は眉間に皺を寄せたまま大きく溜息をついて、そのまま黙り込んだ。




「………」
「……柚木先生」
「平澤さん、何度も言っています。河原先生は、そういう人です」
「………」


 また、涙が滲む。
 好きじゃないって宣言したのに、この滲む涙は一体何なのか……。


「河原先生は、駄目なんですって。あんな真面目そうな見た目して、そういう人ですから」
「……」



 胸が苦しい。
 痛い、辛い、悲しい。


 沢山の感情が一度に押し寄せてきて、心が悲鳴を上げている。



「平澤さん、他に目を向けてはいかがですか。他が……僕が、ここに居ます」
「……」
「そうやって毎日泣くくらいなら、僕を利用してみませんか」



 少しずつ近付いてくる、柚木先生の唇。




 傷付いた私の心は、さほど反応しない。

 どうでも良くなったわけでは無いけれど、柚木先生なら良いかなって気がして……。





「………」





 近付いてきた柚木先生の唇を、私から迎えに行ってしまった──……。







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