どこの誰よりも、先生を愛してる。
職員室で仕事をしていると、部活が終わった柚木先生が戻ってきた。
溝本先生を含め他の先生たちはみんな部活に行っており、ここには俺1人。
柚木先生は部屋を見回す。
そして、俺の姿を見るなり睨みつけてきた……。
「……」
「……何だ」
「セフレがいること、別に咎めるつもりはありません。けれど、それにより傷付く人がいることをそろそろ覚えて下さい」
「……」
誰を指した話か、分からなかった。
そもそも、何でセフレのことがバレているのか。それすら分からない。その件について問おうとすると名前を呼ぶ。
「……柚木先生」
「あ、河原先生。弁解は不要です。僕は聞きません」
しかし、用件を言う前に切り捨てられてしまった。
そして柚木先生は俺から少し離れた自席に戻って行く。
「……意味が分からん」
思わず漏れる溜息。
「……」
誰を指した話か分からないと思ったけれど、ふと頭に過る平澤の姿。
俺は知っている。
柚木先生は、平澤のことが好きだということ。
多分、そういうことだろう。
「はぁ……」
そういう俺も。
実は最近、無性に平澤のことが気になる。
それが恋愛感情かと聞かれると、多分違う。
生徒として気になるのかというと……それもまた違う。
正直な話、自分でも自分の感情が分からない。
そんな俺は、そろそろ溝本先生との関係も解消しなければならないと密かに考えていた。これについては平澤が関係しているわけでも無い。ずっと俺が思っていること。
何もかも中途半端。
いつの日か、柚木先生に言われた言葉。
全く、その通りだと思う。
他人にそう指摘されるつまらない俺は、本当に中途半端で適当な、どうしようもないただのクズだ。
「……はぁ」
頭が痛くなる。
俺は物事を考えることを止め、再び手元の書類に目を落とした。
(side 河原 終)