どこの誰よりも、先生を愛してる。

誤解と事実




 放課後、誰もいなくなった2年生の教室。
 1人で席に座って窓の外を眺めていた。


 一見、冷静を装っているけれど。
 心臓は痛いくらい跳ねて辛い。


「………」


 グラウンドで準備運動をしている陸上部。
 その中に愛理の姿が見えた。


 もう二度と戻らない。
 幼馴染として過ごした日々。

 そう考えると涙が込み上げてきた……。



「……平澤、お待たせ」
「……」


 声がした方を向き、目に浮かんだ涙を拭う。

 教室に現れた河原先生は……いつもと違い、少し悲しそうな表情をしていた。


「平澤……大丈夫か」
「大丈夫です。すみません」


 先生は私の隣の席に座り、こちらに顔を向ける。


 何だか、夢みたい。
 隣に河原先生がいて、私を見ているなんて。


「……あれから、三崎と渡津とは変わらずか」
「あ、はい。というか、悪化しました」
「三崎、陸上部を辞めてたもんな。県体も近いというのに」
「……そうです。全ては愛理が圭司に告白したことから始まっているんです。男女の友情は成り立たないということが、よく分かりました」
「……」



 そう呟いて、また窓の外を見る。

 愛理は笑顔で筋力トレーニングをしていた。



 その様子にまた、目に涙が滲む。



「……そういや、平澤。夏休み、宿直室でのこと……嫌な思いをさせてごめんな」
「……」



 背中越しに聞こえてきた、河原先生の呟くような声。



 その話……。
 想像をしていなかった話題に、動悸がし始める。



 もしかして、溝本先生と付き合っているって河原先生の口から直接聞くことになるの?

 そんなの、絶対泣いてしまう……。




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