どこの誰よりも、先生を愛してる。
第5章 先生と一緒に
指名
1人で過ごす時間が増えてしまった私。
授業間の休憩は仕方ないとして、昼休みは今もまだ部室で柚木先生と過ごしていた。
ただ、私が河原先生と話したあの日以来、何だか柚木先生の様子がおかしい。
「先生、今日もそれだけですか」
「はい」
コンビニのお弁当を食べていた柚木先生。それなのに最近は食欲が無いと言って、こんにゃくゼリーばかり食べているのだ。
「………」
元気も無い。
授業中も何だか上の空。
教科書の音読で1ページ飛ばしたり。
途中で今何をしていたのか分からなくなったり。
同級生たちはそんな柚木先生の様子を見て笑っているけれど、誰よりも柚木先生と関わりが深い私からすれば、笑っている場合では無い。
「先生、ちゃんと食べて下さい。心配です」
「……じゃあ、僕と付き合って下さい」
「えっ?」
何の脈絡も無い突然の言葉に驚いた。思わず声を上げると、先生は焦ったように口元を手で覆い、目線を床に移す。
「す、すみません。失言です」
「……」
河原先生に何か言われたのかな。そうとしか考えられない、柚木先生の様子。
私が中途半端に、柚木先生の言葉に乗ったから。
私がまた、柚木先生を傷付けた。
「……先生、ごめんなさい。私も河原先生と同じで、中途半端ですよね。自分がされていること、私も柚木先生にしていたみたいです」
お弁当を食べる手を止めて深く頭を下げると、先生は驚いたように両手と首を振る。
「いや! 違います、違います。違う……。平澤さんのせいじゃないです。僕が“河原先生のこと好きなままでも良い”と言って詰め寄ったのですから」
「………」
柚木先生の呟くような、自分に言い聞かせるような言葉。それに対して私は、何も言えなかった。
「……キスして、ごめんなさい。河原先生に言われたでしょう、もう僕とするなと」
「………」
「大丈夫。もう、しませんから」
「………」
悲しそうに、そっと私の頭を撫でる。
何故か分からないけれど。
柚木先生の表情に、胸が凄く痛んだ。