どこの誰よりも、先生を愛してる。


 草抜きが終わり、荷物を持って校舎から出た部活からの帰り道。


 また、学校の敷地と道路の境界で、河原先生がタバコを吸っていた。その光景が目に入り、私の心臓は一気に心拍数を上げ始める。


 相談室で『先生のこと諦めない』と宣言をしてから、2人で会うのは初めてだ。
 他の道から帰るか、話し掛けるか。急に出てきた選択肢に悩み、少し立ち止まる。そして、どうするかを導き出した私は、話し掛けることにした。


「……よし」



 唾を飲み、軽く息を吐いて、先生の元へ駆け寄る。



「かーわはら先生っ♫」
「平澤……」


 少し体を跳ねさせ、あからさまに嫌そうな顔をした河原先生。その表情に少しだけ傷付いたが、その程度で私は挫けない。


「タバコって美味しいんですか?」
「……お前は知らなくて良い。てか何で俺がここに居るタイミングで現れるんだよ」
「違います。部活が終わるタイミングで先生がここに居るんですよ」


 更に先生の方へ近付くと、電子タバコの本体から吸い口を抜いた。そして携帯用の吸殻入れに入れて、冷たく一言。


「子供にとってタバコは害だ。近寄るな」
「こ、子供じゃないです!」
「子供だよ。高校生なんて」


 そう言って河原先生は校舎に向かって歩き始めてしまった。


「〜〜〜っ!!!」


 体に力が入り、思わず目に涙が浮かぶ。

 まーーったく相手にして貰えない!!!





 私が告白して、少し嬉しかったと言ってくれたのに。河原先生からはそんな雰囲気を一切感じない。




「子供扱い、悔しいっ!!」




 そう思いつつ、子供なのは事実だからまた悔しい。

 やり場の無い感情が溢れてどうしようもない私は、悔しすぎて小走りで家まで帰った。





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