どこの誰よりも、先生を愛してる。
傷付けたくない
翌日の昼休み。
恐る恐るボランティア部の部室に行くと、鍵は開いていたが柚木先生はいなかった。
「………」
昨日帰ってから、改めて思った。
昨日の私の行動は、柚木先生を傷付けたに違いない。
あの、悲しそうな表情。どう考えても、そんな表情をさせてしまった私の行動が悪い。
そう思った時……。
「あ、平澤さん! こんにちは!」
「……えっ?」
元気よく現れた柚木先生。
お弁当を持っている先生は部室に入って扉を閉め、私の隣の席に座った。
「今日からちゃんと食べます。お弁当を買って来たんですよ」
そう言って袋からコンビニ弁当を取り出した。
柚木先生は、予想外にいつも通りだった。
「……え?」
呆然と柚木先生を眺めて固まっていると、不思議そうな顔で私の肩を叩いた。
「どうしました? お弁当食べましょうよ」
「あ……はい」
いつも通りなのが、逆に気になる。
私が悪いのに。逆に気になってしまって、どうしようもない。
「………」
お弁当を食べる気力が湧かず、箸を持ったまま固まっていると、柚木先生が私の顔を覗き込んできた。
目を合わせると先生は微笑んで優しい声色で呟く。
「平澤さん。考え事は駄目ですよ」
「……」
柚木先生の顔を見ていると、思わず涙が溢れ始めた。
優しそうな表情に胸が痛み、ずっと心の中にあった思いも一緒に溢れ出す。
「柚木先生、ごめんなさい。私やっぱり、河原先生のことが好きです。お2人がいたら、河原先生を選んでしまいます。柚木先生は以前、河原先生のことが好きなままでも良いって言っていましたけれど……。このままだと私、柚木先生を何度も傷付けることになってしまいそうです」
その言葉に、柚木先生は少しだけ口角を上げた。
何だか悲しさと嬉しさが混ざったような、複雑な表情をしている。